海上保安官採用試験の課題論文とは?傾向やテーマ、対策方法を解説

海上保安官の課題論文
悩んでいる人

海上保安官採用試験で課題論文ってあるのですが、どんな試験ですか?またどうやって対策すればいいのか教えてください。

海上保安官採用試験(大卒程度)の一次選考で行われる課題論文試験。

「論文って試験名だから文章を書く試験でしょ?」と何となく内容を想像するけど、イマイチどんな試験なのか把握できていないのではないでしょうか。

そこで本記事では、これから課題論文対策を始める方向けに、傾向や過去の出題テーマを紹介します。

対策方法も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

※その他、海上保安官の試験情報は「対策ガイド2024|海上保安官採用試験(大卒程度)の内容と傾向」でまとめています。

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海上保安官採用 課題論文の概要

課題論文とは、課題テーマに対して文章を書かせることで、受験者の考え方や熱意などの人間性を総合的に判断する記述式の試験です。

ただ単に文章を書くのではなく、 課題テーマを正しく読み取り、自分の経験や体験を盛り込みつつ説明できるかなど、知識の総合的な応用力が問われます。

試験時間や文字数などの概要は次のとおり。

試験時間180分
問題数2題
文字数1500字
配点比率2/6
令和5年度の試験情報

試験時間は長いと思うかもですが、テーマは2題あるんですよね。

制限時間内で文章を適切に構成し、要点を明確に伝えることが重要です。また、普段から時間配分を意識して書く練習をしてください。

文字数は何文字くらい書けばいいですか?

結論、8割以上書きましょう。(1,500字が上限なので1,200字程度です。)

文字数は誰が見ても一発でわかる評価基準なので、極端に文字数が少ないと減点もしくは採点不可の判定を受けることになるんですよね。

知識や語彙が乏しいと多くの文字を書くのは難しいので、普段から語彙力も増やしておくといいでしょう。

海上保安官採用 課題論文のテーマ

海上保安官採用試験の課題論文で出題された問題テーマをまとめています。

  • 令和5年度
  • 令和4年度
  • 令和3年度

令和5年度

問題1

人の尊厳や人格を傷つけるハラスメントには様々な種類があり、いずれも組織の生産性を下げたり、人材の損失につながったりするおそれがある。 組織内で発生するハラスメントのうち、あなたが特に問題視するハラスメントの種類を一つ挙げ、 その防止対策及びハラスメント事案が生じた際の対応に関し、組織として講ずべき措置と、職員個人がとるべき行動について、具体的に論じなさい。

問題2

 船舶を安全かつ効率的に運航するためには、航路標識を活用し、他船の動向及び自船の位置を常に確認しながら安全な進路へ導く必要がある。このため海上保安庁は、航路標識の点検や整備に努めて交通の安全を確保しており、消灯が即事故につながるような灯台などの重要な航路標識では、電源に自然エネルギーを活用したり、停電時も小型発電機や蓄電池などでバックアップする体制をとるなどしている。

 ある年の10月1日(日)の夜、A海上保安部付近に集中豪雨があり、所管しているB岬灯台付近で大規模ながけ崩れが発生した。これにより、B岬灯台へと続く道路とB岬灯台に電力を供給していた送電線鉄塔が崩落し、同日21時にB岬灯台への送電が途絶した。関係機関によると、B岬灯台への送電再開まで10日、道路の復旧にはそれ以上の日数がかかる。

  B岬灯台には予備電源として小型発電機が設置されており、消灯していないことも確認できたが、小型発電機に燃料の軽油を補給しなければいずれ停止し消灯するため、燃料補給をする必要がある。

 なお、燃料補給はA海上保安部交通課の職員6名(表を参照)で官用車1台(定員4名)のみを使用して行い、他からの支援はないものとし、職員の勤務形態に応じた対応をする必要がある。

 あなたがC課長であると仮定し、B岬灯台への送電再開を同年10月11日(水)21時としたとき、 それまでの間の小型発電機への燃料補給について、下記条件を踏まえて計画を立て、その具体的内容(何日の何時から何時にかけてどのメンバーで補給作業を行うのか)と理由について詳しく説明しなさい。

海上保安官採用課題論文のツール

<条件>

  • 小型発電機の燃料タンク容量は160Lで、10月1日21時時点では140L残っていたが、1日40Lずつ消費する。
  • A海上保安部から崩落地点手前までは車で片道1時間かかる。そこからB岬灯台まで山道が通じており、崩落地点手前からB岬灯台まで往路・復路とも徒歩で3時間かかるものとする。
  • 小型発電機の燃料タンクへの給油作業にかかる時間は、考慮しなくてよい。
  • 山道には照明がなく、舗装もされていない。日の出は6:00、日の入りは17:30であり、B岬灯台内部に仮眠するところはない。
  • 燃料補給には軽油20L入りプラスチック製タンク(重量20kg、以下「軽油タンク」という。)を使用する。A海上保安部の燃料倉庫には軽油タンクが8缶保管されている。
  • 官用車には軽油タンク8缶全て積載可能であるが、山道では1缶ずつ職員が背負って運ぶ。
  • 燃料補給に使用して空になった軽油タンクには、業者が使用翌日の夕方に給油してくれる。

令和4年度

令和3年度

問題1

 政府において,労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改 革を総合的に推進するため,長時間労働の是正,多様で柔軟な働き方の実現,雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等の措置が進められている。

 このような状況を踏まえ,あなたが考える,労働者にとって魅力のある職場,就職先として選択される職場となるための対策を具体的に一つ取り上げ,その理由を明らかにするとともに,その対策を実現する際の問題点と,それを解消又は軽減するための方策について述べなさい。

問題2

 東京のはるか南方海上を航行中のコンテナ船Xから,海上保安庁に対して「急病人が発生し,早急に救助して医療機関へ搬送したい」旨の救助要請があった。

 救助に出動可能な勢力としてヘリコプターH及び大型巡視船Vがある場合,救助に要する時間など様々な事項を考慮した複数の救助方法を比較の上で,あなたが最善と考える救助方法について述べなさい。

 なお,コンテナ船X,ヘリコプターH及び大型巡視船Vの状況は,以下のとおりである。

①コンテナ船X

  • 航空基地Aから250マイル(最寄りの港までも250マイル)の海上で停船中(海上保安庁からの指示待ち)
  • ヘリコプターが直接離着船できるスペースなし
  • 速力:25ノット

②ヘリコプターH

  • 航空基地Aで待機しており,搭載燃料量から航空基地Aから200マイルまで進出可能(往復の場合,片道100マイルまで進出可能)
  • 特殊救難隊R(洋上でヘリコプターから船舶に降下し、要救助者を吊り上げ救助する部隊)が同乗するが、風速15m/秒を超える場合、吊り上げ救助の実施は困難
  • 速力:100ノット

③大型巡視船V

  • 航空基地Aから150マイル,コンテナ船Xまで100マイルの海上を航行中。航行可能距離に制限なし
  • ヘリコプターが直接離着船できるスペースあり。ヘリコプターの燃料搭載可能
  • 波高2m又は風速15m/秒を超える場合,ヘリコプターの離着船実施は困難
  • 警備救難艇を搭載しており,同艇を降下して他船から要救助者を救助することが可能(波高2m又は風速15m/秒を超える場合でも,救助の実施が可能)
  • 速力:20ノット
  • 1ノット=1マイル/時(例「速力:25ノット」は,1時間で25マイル航行することを示す)
  • 海上模様は,低気圧が接近中であり,波風ともに徐々に激しくなってきている状況
  • 上記以外に必要となる想定があれば,適宜設定することも可とする。

海上保安官採用 課題論文の評価基準

海上保安官採用試験の課題論文は、以下の観点に沿って評価されます。

評価の観点

問題の趣旨○ 出題の趣旨を正しく理解し,設問に沿った解答をしているか。
○ 出題に関連する基礎知識及び問題意識を有しているか。
思考・判断○ 広い視野から多角的に考察しているか。
○ 問題解決のための取組を述べ,適切な判断・結論を下しているか。
○ 海上保安官として適切な判断・結論を下しているか。
○ 論理に矛盾や飛躍がなく,論旨が明確になっているか。
構成・文章○ 文章に説得力があり,論文として格調を備えているか。
○ 正しい用字,用語で書かれているか。
出典元:海上保安官採用(課題論文試験評定基準)より

評価の方法

上記「評価の観点」に基づき、2名の試験官が問題それぞれについて次の3段階で評価します。

A平均より明らかに優れているもの
B平均的なもの,又は平均より劣るが合格に値するもの
C平均より明らかに劣り,合格に値しないもの

問題ごとの点数は、A(3点)、B(2点)、C(1点)で、試験官それぞれの評価の合計が点数となります。

*満点12点(問題1「6点」+問題2「6点」)

基準点と足切り

各問題の基準点は3点です。

いずれかの問題の点数がこれに達しない場合は足切り(一発不合格)になります。

評価が悪くなる理由としては、テーマの把握ができていなかったり、文字数が5割以下だったりすることが挙げられます。また、字が汚い(丁寧であればOK)、誤字脱字が多いっていうのもよくないですね。

海上保安官採用 課題論文の対策方法

課題論文の書き方を3ステップで解説していきます。

  1. テーマをしっかり把握する
  2. 文章構成を知る
  3. 書く→添削を繰り返す

テーマ(傾向)をしっかり把握する

まず、課題テーマを正確に把握することが重要です。

なぜなら、課題テーマからズレた内容を書いてしまえば、どれだけ文章力があっても評価されないからです。

たとえば、「挫折した経験とそこから得たこと」という課題テーマの場合、『挫折した経験から何を得たか』がメインテーマなので、挫折経験だけで終わっている課題論文では課題テーマを正確に把握しているとはいえません。

課題論文を書くときは何を書かせたいのか(求めているのか)を把握したうえで書き始めましょう。

文章構成を知る

次に、どんな順番で書けばいいのか「文章構成」を考えましょう。

なぜなら、どのような順番で書いていくのかを検討しないと、テーマに矛盾があったり、話がとびとびになったりして、評価をもらえる合格答案を書くことができないからです。

たとえるなら家の設計図。お家を建てるときは、最初に設計図を組み、その通りに家を建てないと欠陥住宅になりかねませんよね。

文章構成をあらかじめ決めておけば、スムーズに書き始めることができる点にくわえ、論理的な文章になるため採点者も読みやすい=評価は上がるという算段です。

なお、より詳しい手順については、こちらで解説しています。

書いて添削をうける

文章構成が決まったら、その型どおりに書いていきましょう。知識があっても、それを文章にすることは難しいからです。

ここまで解説したとおり、課題論文では課題テーマの把握文章構成が評価を上げるために必要です。しかし、これらの観点は素人がどれだけ頑張っても理解することはできません。

そこで重要になるのが、第三者に見てもらい客観的な評価を受けること。しっかりした人に添削をしてもらえば自分の弱点や伸ばすべきポイントも簡単に把握できるため効率よく課題論文対策を進めていくことができます。

オススメの添削サービスをこちらで紹介しています。頼れる人がいない人は参考にしてください。

(補足)知識のインプット

課題論文試験は社会時事や海上保安官について知識がないとまったく書くことができません。

そこで、これらの情報をインプットすることもやってください。

社会時事の勉強法

社会時事は、普段からニュースを見て意見を考えることが重要です。また、「速攻の時事」を使えば、教養試験の対策にも繋がるのでおすすめ。

編集:資格試験研究会
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海上保安官の知識

海上保安官の職務内容は、「海上保安庁のHP」を隅々まで見て勉強しましょう。

志望動機を考えるきっかけにもなるのでおすすめです。

海上保安官採用 課題論文で落ちないように対策を始めよう!

課題論文で落ちる人に共通する理由って何だと思いますか?

結論をいえば、「独学で対策をしている」というのが僕の意見です。なぜなら、知識のない人が適当に文章を書いても、

  • テーマの読み取り
  • 文章構成
  • 原稿用紙の使い方
  • 正しい語句、文法
  • 誤字・脱字 

といった部分を、きちんと書けているのかどうか判断できないからです。ここが判断できずに独学で突き進んだ結果、落ちてしまう人を何十人も見てきたんですよね…。

また、答案を書いたら書きっぱなしってことが多いです。答案を書いて誰にも見せないというのは、問題を解いても答え合わせをしないのと同じこと。

過去問を眺めるだけでは、課題論文を攻略できません。過去問を使って答案を作成し、添削を受けることで徐々に上達します。

課題論文が原因で不合格にならにように、早めに(遅くても試験の3ヶ月前を推奨)準備を始めていきましょう。

今回は以上です。

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