海上保安庁の各分野における専門職員を養成する教育機関「海上保安学校」。
そんな海上保安学校に入るには、どうすればいいのでしょうか。
結論、人事院が実施する「海上保安学校学生採用試験」に合格すること。
本記事では、そんな海上保安学校学生採用試験の概要や難易度を紹介します。
試験内容と対策方法も解説しているので、「これから海上保安官を目指したい」「受験勉強を始めたばっかり」という高校生や大学生、社会人は参考にしてください。
海上保安学校に入るには?
海上保安学校に入るには、人事院が実施する「海上保安学校学生採用試験(特別)」か「海上保安学校学生採用試験」に合格することが必須条件です。
【受験資格】高卒・大卒どちらでも入学可能
高卒者でも、大卒者でも、次の条件を満たせば受験可能です。
海上保安学校(特別) | 2024年4月1日において高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して13年を経過していない者及び2024年9月までに卒業する見込みの者。 |
海上保安学校 | 2024年4月1日において高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して12年を経過していない者及び2025年3月までに卒業する見込みの者。 |
【試験日程】5月と9月に選考
海上保安学校(特別) | 2024年5月12日(日) |
海上保安学校 | 2024年9月22日(日) |
海上保安学校の試験日は9月がメイン。特別(10月入校)は5月なので、少し早めの試験対策が必要です。
【試験科目】公務員試験の対策が必要
一次試験 | 基礎能力試験 |
---|---|
学科試験 | |
作文試験 | |
二次試験 | 面接試験 |
体力試験 |
試験科目を見てのとおり、筆記試験だけでなく、面接試験や体力試験の対策も必要です。
一般的な大学入試とは対策方法が違うので、公務員試験の特性を理解し、勉強するようにしましょう。
海上保安学校の難易度
結論からいうと、海上保安学校の難易度は、中程度からやや高いと言えます。
理由は次の3つ。
- 学力と人間性が求められる
- 広い試験範囲
- 時間制限と問題の多さ
学力と人間性が求められる
海上保安学校学生採用試験では、知識や学力だけでなく、公務員・社会人としての適性・資質や人間性(コミュニケーション能力)も評価されます。
つまり、単純な学力だけでなく、多角的な能力が求められることになります。
これまでの入学試験や資格試験では、知識を詰め込んでいれば合格できたものが、能力を総合的に評価されるため、単に知識を詰め込んでいるだけでは合格できないのです。
面接や作文の良し悪しを自分1人で判断するのは難しいので、何をどう対策すればいいか悩む人続出です…。
広い試験範囲
中学校から高校までに習った範囲から出題されます。公務員試験で独特の科目を含めると、全部で5分野22科目です。
数的処理 | 数的推理、判断推理、空間把握、資料解釈 |
---|---|
文章理解 | 現代文、英文、古漢文 |
社会科学 | 政治、経済、社会、倫理 |
人文科学 | 日本史、世界史、地理、国語、英語 |
自然科学 | 数学、物理、化学、生物、地学、情報 |
- 情報は2024年度から追加されます。
高校・大学入試の約3倍の科目数なので、対策には相当な時間が必要です。受験者にとっては大変な試験の一つと言えるでしょう。
時間制限と問題の多さ
90分で40問に解答しなければなりません。
平均して一問あたり2分強しか時間がないため、時間配分と迅速な判断が求められます。
具体的には、次のような問題を2分で次々に解いていく必要があるってことです。
正答を確認する(タップして表示)
正解:4
以上の点から、海上保安学校は、広範な知識の習得、効率的な学習戦略の構築、そして優れた時間管理能力が求められる難易度のやや高い試験であると言えます。
海上保安学校の試験内容と対策方法
海上保安学校の選考は、一次試験と二次試験に分けて行われます。
それぞれの試験内容と対策方法を解説します。
海上保安学校の一次試験内容
試験種目 | 内容 |
---|---|
基礎能力試験 | 公務員として必要な基礎的な能力(知能及び知識)についての筆記試験 |
学科試験 | 数学や英語、物理の基礎学力を測る筆記試験 |
作文試験 | 文章による表現力、課題に対する理解力などについての筆記試験 |
基礎能力試験
基礎能力試験は、 計算力や読解力を測る『一般知能』と、今までに勉強してきた基礎学力を測る『一般知識』で構成される筆記試験です。
※対象は全課程(共通問題)。
試験時間 | 90分 |
---|---|
問題数 | 40問 |
出題形式 | 択一式(マークシート) |
問題レベル | 高校卒業程度 |
試験科目 | ・数的処理 ・文章理解 ・社会科学 ・人文科学 ・自然科学 |
1科目あたりの出題範囲も広範にわたるため、出題傾向を把握し、効率よく勉強してください。
詳しい出題傾向は次の記事を参考にしてください。
特別(10月入校)
4月入校
学科試験
学科試験は、数学や英語、物理の基礎学力を測る筆記試験です。
※対象は情報課程、航空課程、管制課程、海洋科学課程。
試験時間 | 120分(180分) |
問題数 | 26問(39問) |
出題形式 | 択一式 |
試験科目 | 数学 英語 (物理) |
- ( )は海洋科学課程
大学入試レベルの内容です。
そのまま高校の授業が役立つので、先生に聞くなどして対策しましょう。
作文試験
作文試験は、自分の考えや主張を論理的に説明する文章形式の試験です。
筆記試験では判断できない、論理的思考力や読解力、人間性などを総合的に測ることを目的としています。
※対象は船舶運航システム課程。
試験時間 | 50分 |
---|---|
問題数 | 1題 |
文字数 | 600字 |
評価基準 | ・内容 ・表現 ・文字 |
作文は点数化されず、合否判定のみですが、毎年、作文で評価がもらえずに不合格となる受験者は一定数いるので、早めに準備をしてください。
詳しくは次の記事で解説しています。
海上保安学校の二次試験内容
試験種目 | 内容 |
---|---|
人物試験 | 人柄、対人的能力などについての個別面接 |
身体検査 | 胸部疾患、血圧、尿、その他一般内科系検査 |
身体測定 | 身長、体重、視力、色覚、聴力についての測定 |
体力検査 | 文章による表現力、課題に対する理解力などについての筆記試験 |
人物試験
人物試験は、志望動機や自己アピールなどを問うことで、あなたが海上保安官として相応しいかどうかを評価・判断する面接試験です。
試験時間 | 15分 |
人数 | 1人 |
面接官 | 3人 |
配点比率は低いですが、人物試験でC評価(A~Eの5段階)以上ないと足切り(=不合格)なので注意してください。
勉強時間の多くを基礎能力試験や学科試験に充てるのは正しいですが、面接対策を後回しにしたため落ちてしまった人を何人もみてきました。
そんな不幸な結末を迎えないためには、筆記対策と並行して面接練習を行うことが重要です。自分らしさや海上保安官への熱意をアピールできるように準備していきましょう。
詳しい傾向や対策について、詳しくは次の記事を参考にしてください。
体力検査
- 上体起こし
-
ひざを曲げ、あおむきに寝た姿勢で、30秒間のうちに何回上体を起こすことができるかを検査します。
- 反復横跳び
-
100cm間隔に引かれた3本のライン上で、20秒間のうちに何回サイドステップすることができるかを検査します。
- 鉄棒ぶら下がり
-
水平に設置された直径2.8cmの鉄棒を両手でにぎり、両足を床から離してぶら下がれるか検査します。
これらを行い、それぞれ基準を満たすかどうかを検査します。項目ごとの基準は次のとおり。
種目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
上体起こし | 21回以上 | 13回以上 |
反復横跳び | 44回以上 | 37回以上 |
鉄棒 | 10秒以上 | 10秒以上 |
「体力検査は出来て当たり前」の部分が強いので、日頃からトレーニングをしておきましょう。
なお、基準に達しないものが一つでもある場合は、不合格となります。得意種目を伸ばすだけでなく、苦手種目を減らせるように頑張ってみてください。
どの種目も正しい方法で取り組まないと回数にカウントされないので、「新体力テスト実施要項(文部科学省)」に目を通して方法や基準を知ってくださいね。
海上保安学校に関するFAQ
最後に、海上保安学校に関連したよくある質問に回答します。
海上保安学校の合格に向けて対策しよう!
海上保安学校は、試験日が独立しているため、多くの志望者が全国から集結します。
そのため、簡単に合格できません。
最近の合格率は上がっているものの、試験範囲は広く、迅速・正確な判断力が求められるため、難度はやや高め。
少しでも合格率を上げるには、試験内容を正確に理解し、効率よく対策することです。
試験日程から学習スケジュールを考え、勉強を始めましょう。